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2006年11月07日

黒田の残留に思うこと

このタイトルを見てもカープファン以外の方は何のことかわからないと思います。

昨日、カープの黒田投手がFA権を行使せず球団に残ることを決めたという出来事です。私も一広島県人、一カープファンとしてこの知らせを嬉しく聞いたわけです。

ローカル番組では結構大々的に取り上げ、黒田本人も出演して心境などを語っていましたが、その話を聞いていて思ったことです。

ファンと選手の関係って、「食」における生産者と消費者の関係とよく似ています。

黒田はしきりに「ファンと一緒にカープを盛り上げて生きたい」といった発言をしていましたが、その裏にはしっかり球状に足を運んで自分達を支えて欲しい、カープの試合を盛り上げて欲しい、という思いがかなり見て取れました。

FA騒動が持ち上がるたびに、特にカープファンの間では他球団に移籍した選手は「裏切り者」的な誹りを受け、残った選手が誉めそやされますが、それだけ騒ぐ割には観客動員数は12球団中最低。

つまりは好きなことだけ言って自分達は何もしない、という構図が出来上がっているわけです。

幸い私は現在消費者に恵まれておりますので、こうした関係性はありませんが、一般的に「食」を鑑みたときには消費者からの一方通行的な要求に振り回されてきた生産者の歴史(というには短いものですが)を否定は出来ません。

「より安く、より良い物を」という経済理論に踊らされ、それを農産物にまで要求してきたのが始まりですが、その要求にこたえるために農民達はン千万もする機械を買い、高い薬や肥料も買い、大量に安く農産物を供給してきたわけです。

で、今度は健康ブームに乗って「安心・安全」とこれまでのことは棚に上げて非難しているわけです。

これは単なる一例ですが、仔細に渡るとこんな話はいくらでも出てきます。

断っておきますが、消費者だけに責任があるわけではなく、農民も何も考えず、国や農協の言いなりになって金儲けしてやろうという思いから出発しているわけですから、私から見るとお互い様なのですが、これを言い出すと今回の論点からはずれますので話を元に戻します。

さて、この間消費者は何をしてきたのか。自分達の命を紡ぐ「食」を守るために何をしてきたのでしょう。スーパーを歓迎する裏では八百屋が姿を消し、安いもの、見目の良いものを争って手に入れようとし、果ては旬にないものを重宝して高値で手に入れブルジョア気取り。

消費者が生産者に要求をすること自体は悪いことではありませんが、要求をする以上はそれ相応の責務を果たさなければなりません。
簡単に言うと「安いもの」が欲しければそれなりのものしか手に入らないということであり、「いいもの」が欲しければそれだけの対価を払わなければならないということです。

工業製品であれば「より安く、より良く」ということもある程度までは可能でしょうが、自然のものに対してはその理屈は通用しません。だから現在の農産物が工業製品化しているわけですし、「安い」に重点を置いて要求をした時点でその要求を呑んで作られたものは甘んじて受け取らなければならなくなっているのです。

カープファンは球場に足を運ばない理由を「カープが弱いからだ」と言います。選手達が勝たないから応援もしない、と。

しかし、逆に言えば「応援すらしないから頑張らない、結果勝てない」ということにはなっていないでしょうか。

要求だけしているのは簡単なことです。しかし、応援のない要求は代償を伴います。カープの場合は成績不振、「食」の場合は健康被害や環境破壊といったところでしょうか。個人的な見解をいえば、教育問題や社会問題にまでも繋がっているといえるのですが。

少し脱線します。

野球は本来的に個人の能力が必要ですが、食物を手に入れること、つまりは作ったり採ったりという行為は本来生き物であれば自分で出来る、更に言えばしなければならないことです。

それを放棄した時点で何らかの拘束を受けるというのが当たり前の姿ではあります。例えば、犬は人間に餌をもらうことによりペットとなり、鎖に繋がれ、芸までさせられるわけです。ひどい場合は虐待も受けます。

ただただ食べ物を支配されるという一事のためにです。

話を元に戻します。

安全な食材を手に入れるためには消費者として何をすべきなのか、農薬の害を憂う前に、環境破壊を憂う前に、その根底にある「農」の現場をどれだけ知っているのか、そしてそこから離れた一消費者として何をなすべきかはごく身近に転がっているはずです。

私は今現在、応援ばかりをしてくれる消費者に囲まれ、逆に私のほうが何もそれに応え切れていないという申し訳なくも恵まれた状況にあります。いつ愛想をつかされるのかとという脅迫感と闘いながらの百姓生活ではありますが、その理解と応援があるからこそ薬や肥料の誘惑にも打ち勝つことが出来ていると思っています。

私と消費者の関係性が理想形だとは思っていません。細かく言えばいくらでも問題点は出てくると思います。
しかし、それは枝葉の部分であり、根幹がしっかりしていればいくらでも改善していけることと思っています。

今回は消費者側ばかりを責め立てるような書き方になってしまいましたが、前述の通り生産者側の問題もかなり深刻なものがあると思っています。それはまたの機会にさせてください。

たかだか野球の話題一つでここまで引っ張る偏屈者の話にお付き合いいただきありがとうございました。

2006年11月07日 21:57

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Comments

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投稿者 mfxtyjdiz : 2016年01月18日 03:23

あややさん、
そういってもらえると嬉しいですね。
ほんと、売り手と買い手の関係というのは難しいと思います。どちらか一方が強くなりすぎないほどよい付き合い方というのはお互いの理解と共通の意識が必要ですね。

投稿者 kenzo : 2006年11月09日 17:37

う-ん、そうですねぇ~
当たり前すぎて・・・感謝の気持ちを忘れてはいけませんよねぇ~
お客様あっての商いですけど・・・気持ちが伝わる商いでありたいです・・・
私も恵まれてますねぇ~
こんな素敵な思いでツクラレタ野菜たちを調理できるのですから・・・
感謝感謝ですね。

投稿者 あやや。 : 2006年11月09日 02:57

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