2005年05月17日
<むち打ち症>実は「脳脊髄液減少症」と、全国で訴訟相次ぐ

<むち打ち症>実は「脳脊髄液減少症」と、全国で訴訟相次ぐ

 交通事故でむち打ち症と診断された被害者が、「脳脊髄(せきずい)液減少症」と主張し、加害者や保険会社と争う民事訴訟が、東京、千葉など全国で相次いでいる。患者団体は訴訟件数を50件以上と推定。被害者側弁護士によると、被害者側の勝訴判決はまだないが、賠償額や加害者の刑事罰にも影響するため、各地の訴訟に注目が集まっている。【渡辺暖】
 むち打ち症は、痛みの原因が明らかでないのが特徴で、被害者が治療の継続や後遺症に対する補償を求めても認められにくい。自賠責の後遺障害等級では「後遺障害なし」か、一番下の14級(局部に神経症状を残す)程度で、詐病を疑われることさえある。
 ところが、00年になって一部の医師が「むち打ち症の原因は、髄液が漏れている脳脊髄液減少症だ」と主張し始めた。NPO法人「鞭(むち)打ち症患者支援協会」(事務局・和歌山市)などによると、こうした患者に「ブラッドパッチ療法」を施すと、7割以上で症状が好転したという。脳脊髄液減少症を念頭に診察する病院は全国に30カ所以上あり、既に2000人以上がこの治療を受けている。しかし、同症は学説の主流になっていないため、被害者と加害者側の間で、賠償をめぐる対立の原因になっている。
 厚生労働省は「ブラッドパッチ療法の有効性、安全性は未確認」との見解で、健康保険適用を認めていない。
 ◇ことば「脳脊髄液減少症」 脳と脊髄の周囲を循環している脳脊髄液が漏れると脳の位置が下がり、頭痛やめまい、吐き気などの症状を起こす。髄液を採取した際などに発症する「低髄液圧症候群」が知られていたが、むち打ちや転倒時の衝撃などでも、髄液が漏出することがあると主張されるようになった。患者本人の血液を注射し、血液凝固で髄液が漏れた場所をふさぐ「ブラッドパッチ療法」が有効とされる。
 ◇「怠け病」とみなされ…被害者は苦悩
 「保険会社はどうして分かってくれないのか」「怠け病なんかじゃない」。憤りを隠さない患者たち。患者団体は保険適用を求め、厚労省に10万人分の署名を提出、各地の都道府県議会での意見書採択を求める運動にも取り組んでいる。
 長野県の美容師の女性(46)は02年6月、車を運転中、中央線を越えてきた対向車に衝突され、収容先の病院で「全身打撲と首のねん挫」と診断された。「頭頂部を針で刺されるような」鋭い痛みが続いた。転げ回るほどだったが、整形外科医は「手の施しようがない」と話すだけだった。
 やがて、同じ病院の神経内科医が、脳脊髄液減少症の勉強を始めていたことが分かった。事故から4カ月。数回のブラッドパッチで症状が好転、今では6割程度回復したという。
 ところが、加害者側の保険会社は「治療の妥当性に疑問がある」と、治療費支払いに応じない意向を伝えてきた。夫(43)は「保険会社の人は同じ目に遭わないと分かってくれないのか」と憤り、提訴を検討している。
 また、三重県伊勢市の元会社員の男性(44)は01年11月、乗用車を運転中、運送会社のトラックに追突された。頭痛や耳鳴り、左半身のしびれで四つの病院を受診したが治らなかった。販売の仕事で立ち続けると首から背中に激痛が走ったが、医師からは「痛みと付き合うしかない」とさじを投げられた。
 03年、インターネットで脳脊髄液減少症を知った。会社を退職して神奈川県内の病院を受診、1回目のブラッドパッチで耳鳴りもしびれもなくなった。3回目で「完治した」と実感したが、運送会社は「事故と髄液の漏れに因果関係はなく、ブラッドパッチの費用を払う義務はない」と主張し、訴訟になった。
 男性は「外見から分からないために仮病と見られる。真実をどう伝えたらいいのか」と嘆く。
 交通事故で髄液が漏れたのであれば「加害者の刑事処分にも大きな影響を与える問題」と話す法務・検察幹部もいる。
 ◇治療システム化を
 「鞭打ち症患者支援協会」の中井宏代表理事の話 多くの患者の発症経緯から、交通事故で脳脊髄液減少症が起こる可能性があるのは明らか。被害者、加害者双方のために、医学界、国会議員、厚労省、損保業界、法律家らが力を合わせて早期発見、早期治療のシステムを考えてほしい。

加害者側の逃げもひどいが、保険会社の対応もひどい。
私の家族も、相手の居眠りによる追突事故で鞭打ち症に苦しんだ。
その時の保険会社の対応はひどくて、最後には訴訟するのならどうぞと
言っていたのを思い出す。

いつ何時後遺症が発生するかもしれない鞭打ち症は、病気に
なった人には気の毒としか言いようがない、しかも自己が原因によるならまだしも
相手によるものであればどこに怒りをぶつけてよいか分からないだろう。
そのような時に交渉窓口である保険会社に非人間的な態度をとられ困惑した
方も大勢いるはずである。

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